米津玄師「Lemon」に感化されて 高村光太郎「智恵子抄」を読んでみた

MUSIC

ドラマ「アンナチュラル」主題歌として話題になり、
ダウンロード数やMVの再生数も驚異的な数字を記録している
米津玄師のメジャー8枚目のシングル「Lemon」

発売からすでに約一か月経ちましたが
いまだに聞き飽きない中毒性があります。

某音楽サイトのインタビューで米津さんが
この曲に関連する作品として、
高村光太郎の「智恵子抄」という詩集の中の
[レモン哀歌]というポエムを紹介していたので気になり、
読んでみることにしました。

<追記>
先日この記事をちえのたね|詩想舎さんにて紹介いただきました。
読者と本の出会いについて言及された興味深い記事でした。
コメント欄より該当ページに飛べますのでぜひ合わせて読んでみてください。
米津さんの曲で素敵な本を知ることができたこと、改めて嬉しく思いました。

高村光太郎とは?智恵子抄とは?

高村光太郎は明治に活躍していた彫刻家・画家であるそうですが、
有名な作品は詩集が中心のようです。

米津さんが言っていた[レモン哀歌]という詩が入っている
「智恵子抄」は1941年に出版された詩集です。
そのタイトル通り、奥さんである智恵子さんのことを書いた詩集なのですが、
出会ったころから結婚を経て晩年の闘病生活までの二人の生活が
美しく切なく表現されています。

レモン哀歌とLemon

光太郎の奥さん、智恵子はもともと感受性が豊かすぎるところがあり
父親の死をきっかけに神経が衰弱していってしまいます。
急に幼子のように大声でわめいたり
夫である光太郎以外の家族を認識しなくなったり…。
光太郎はそんな智恵子と最期まで寄り添い
生涯の伴侶として一緒に暮らしました。

半ば痴ほうのような症状で精神が崩壊した上に、
肺結核まで患ってしまった智恵子ですが
光太郎から渡された檸檬を一口かじると
一瞬元の智恵子に戻るのでした。
そしてそのまま永遠の眠りにつく。。
そんなエピソードをポエムにしたものが[レモン哀歌]です。

わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした

(高村光太郎 [智恵子抄/レモン哀歌] より)

身の回りのことも自分でできず、
会話もままならない智恵子でも
光太郎は変わらず愛し続けていたんですね。
悲しいことも苦しいこともあった夫婦生活だったと思いますが、
そんな日常ですら智恵子と一緒にいられれば
幸せだったんでしょう。

あの日の悲しみさえ
あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してたあなたとともに
胸に残り離れない
苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない

(米津玄師/Lemonより)

米津さんのインタビュー通り、高村光太郎の[レモン哀歌]は
「Lemon」を思い出させる詩でした。
…というより、「Lemon」の歌詞が[レモン哀歌]に
インスピレーションを受けたもののように感じられる。
と言ったほうが良いかもしれません。

どちらの詩も、愛する人がいなくなって哀しいという気持ちを
哀しいという言葉を使わずにレモンを用いて表現していて
日本語の美しさを改めて感じさせられます。
めちゃくちゃ切ないけど!!!

「智恵子抄」を読むとLemonの曲の深みがより増す!

主題歌ということもあり、ドラマ「アンナチュラル」の登場人物で
同じく恋人をなくした中堂系のイメージが強いこの曲ですが、
「智恵子抄」を読んだ後はまた違った受け取り方ができるような気がします。

ちなみに「智恵子抄」は
高村光太郎目線で書かれた智恵子の詩集ですが、
光太郎の友人である佐藤春夫という人物が書いた
「小説智恵子抄」という作品もあります。

そちらは物語風になっていて、より客観的に
夫婦の様子が感じられる内容になっているのでお勧めです。

米津さんの曲がまた違った解釈で楽しめると思いますので
ぜひ読んでみてください。